斉木楠雄のΨ難 映画版
監督・脚本:福田雄一 原作:麻生修一
いまいち(-10点) 2018年12月2日 ひっちぃ
圧倒的な超能力を持って生まれながら平穏な生活を望む高校生・斉木楠雄が、めんどうくさい同級生たちに絡まれながら、授業をサボるのに都合のいい文化祭を廃止の危機から救うために暗躍する。少年マンガが原作の邦画。
マンガやアニメの実写映画化が最近とくにひどいらしいので、なにか試しに見てみるのもいいかなと思っていたら、ちょうど自分の好きな原作のこの映画がテレビで初放映されたので見てみた。やはりひどかった。
たぶんこの手の作品はあらかじめ配役なんかに制約がある上で作られていると思うのでこういう批評は的外れなのかもしれないけれど、腹黒ヒロイン照橋心美を橋本環奈に演じさせていることが個人的に一番ひどかったと思う。照橋心美の魅力(?)を最大限に活かすには、なにより心の声をしっかりと演じられる人にすべきなのに、声が低くて演技力もない橋本環奈にやらせるのは台無しだった。橋本環奈自身は完璧な美少女だし力演していてその点は好感が持てなくもないのだけど、変顔が見苦しくてしょうがなかった。照橋さんはヘン顔なんかしないのに、妙な気を起こしてウケを狙っていったんだろうか。演出がダメすぎる。声がかわいくてそこそこ早口でしゃべれて最低限美少女と言ってもいい若い女優に笑顔で演じさせるだけでいいのに。
主要登場人物全般に言えることだけど、根本にある人の良さといった奥深い魅力がまったく描かれていなくて、ただただ安易なコメディウケを狙った浅い造り。海藤は中二病の描写しかなくて、肝心のキョドる場面ほとんどなし。灰呂はふてぶてしいだけで、なぜか照橋さんを狙いにいくキャラにされていて違和感が強すぎた。窪保の白目とかアホかと思った。絵面的にはすごく面白かったけど。
一方で登場人物の外見は結構がんばっていて、再現度が高いのは素晴らしかった。特に燃堂のクオリティが高すぎ。灰呂や海藤や窪保もヤバいぐらい感じ出てる。地味に父親も似てたし。母親は内田有紀がやっていたので普通には見れなかったけれどアリだと思った。マジシャンをムロツヨシがやっているのも原作とは離れているけれどこれは良かった。
原作はシュールなギャグマンガなのに、この映画は分かりやすいギャグにしようとヘンなところに力が入っていて台無しだと思った。灰呂の半ケツは良かった。燃堂が「天誅」といって灰呂にカンチョウするところがひどかったけど(こんな難しい言葉を知っているようなキャラじゃない)。
好意的にとると、この映画は原作を知らない人でも楽しめるように作ろうとしていたと思う。だとしたらその方向性自体がそもそも間違っている。こういうマンガ原作の映画って原作を読んだ人が見るものじゃないんだろうか。アニメのほうはサクサク進めていく感じがとてもよかったのに。
ストーリーはそんなに良くはなかったけれど、映画として盛り上がるように作ってるなあと思った。
実写映画の脚本とか演出(監督)とか俳優とかってあんまり競争が働いていないんじゃないだろうか。宮藤官九郎なんかも小劇場からだし、コメディ俳優も芸人だらけだし、外から人を呼んでこないと成り立たない。よく知らないので憶測だけど、閉鎖的で既得権で凝り固まっているんだろうなあ。逆にアニメは過当競争すぎてかわいそう。
と色々酷評してきたけれど、原作の熱心なファンではなく実況(ネットでみんなで突っ込みながらの鑑賞)でバカ映画を楽しめそうな人なら、割と楽しめるんじゃないかなあと思った。
(最終更新日: 2019年9月15日 by ひっちぃ)
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