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    畑健二郎 (講談社 サンデーコミックス)

    傑作(30点)
    2019年3月10日
    ひっちぃ

    由崎星空(ナサ)はとても頭がよくて努力家の少年だったが、高校受験の会場に向かう途中で目を奪われるような美少女と出会い、衝動的に彼女に交際を申し込む。しかし彼女は謎を残したまま結婚の約束だけして姿を消してしまう。色々あって中卒で働いていた彼が18歳になったとき、約束どおり結婚しにきた彼女と再会する。甘酸っぱくもどこか変わった二人の新婚生活が始まる。少年マンガ。

    「ハヤテのごとく!」の作者である畑健二郎の最新作。主人公とヒロインの姿はハヤテとヒナギクにちょっとだけ似ているけれど中身は天然ジゴロとツンデレではなく、交際を通り越していきなり結婚から始まる新ジャンル(?)のラブコメ。

    読んですぐキュンキュンした(笑)。二人はいきなり結婚するので、もうなにをやってもいいのだけど、うぶなナサくんにとっては何もかもが衝撃的で、彼女のたたずまいを間近に感じるだけで興奮してしまう。かわいい女の子が、いきなり自分の部屋で寝泊まりする。しかもずっと。彼女の甘い香り、華奢な体、照れたしぐさ。とにかくかわいい!

    でも彼女はいわゆる「ゆるふわ」系女子ではなくて、ナサくんの直球には照れるけれどそれ以外は割とクールで、ナサくんの勘違いを一つ一つ丁寧に正していく。あんまり怒ったり慌てたりしない。美少女という点を除けば、なんというかとてもリアルな女キャラだと思う。あ、でも隠れオタクで、有名映画の舞台裏なんかを熱く語ったりする。

    一方のナサくんはとにかく興奮しまくり。ちょーかわいい。あ、この作品ってひょっとして女性向けなのかもしれない。男からすると結婚というのは社会的責任が生ずるので一概にいいものではないだろうし。あと、ナサくんは中卒だけどすごく頭がいいので将来的に稼いでくれそう。一方でナサくんは勉強以外は全然一般常識がないので、導いてあげたくなっちゃう的な。

    この作品を読むと結婚したくなると思う。でもこんな幸せな結婚ができる人は多分一割にも満たないと思う。結婚しても1/3は離婚するし、1/3は後悔する。残りの1/3で、相手がそこそこ以上にかわいいとなると、さらに1/5とするとして計1/15ぐらい。やっぱりどこかで妥協しなければならないし、バツ1ぐらいなんとも思わないほうがよさそう。ナサくん中卒だから普通の女性だったらまず敬遠しそうだし。

    彼女は冒頭で謎の能力を持っていることが読者には分かるし、どうやら月に関係する何か大きな秘密を持っているみたいなのだけど、いまのところその謎はまったく明かされない。ただただ普通に新婚旅行とか両親に紹介とかの話が続いていく。今後を楽しみにするしかない。

    ギャグがまるで気持ちよく決まる送りバントのようで、作者の意図通りに笑ってしまった。「クラウド」のくだりなんかちょっと露骨すぎて教科書を見ているような気にすらなった。

    一方で時々シリアスが見え隠れするのだけど、こっちのほうは相変わらず読んでいてちょっと不安になった。ヒロインのことを謎の一家の娘たちが追いかけ続けているのだけど、このまま日常の話が続いてくれないかなあとさえ思ってしまう。

    そういえば作者の前作「ハヤテのごとく!」の結末は、正直自分にはあんまりピンとこなかったけれど、怒涛の展開がとても盛り上がって良かったと思う。ただ、色々な別れがあったのに割とサラッとしていたので、もっと感傷があって欲しかった。ひょっとして続きを書くつもりがあるからああいう形にしたんだろうか。

    特に若い人に読んでもらって、少子化を食い止めて高齢化社会を支えてほしい(投げやり)。

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