テニスの王子様 18巻まで
許斐剛 (集英社 ジャンプ・コミックス)
いまいち(-10点) 2019年9月7日 ひっちぃ
伝説的なテニスプレイヤーを父に持つ天才テニス少年越前リョーマがテニスの盛んな名門中学校に入学し、生意気な口をききながらその圧倒的な実力により先輩や同輩から認められ、団体戦でライバル校を倒していく。少年マンガ。
一時期よく見ていたまとめサイトがこの作品のとてもテニスとは思えない非現実的な超展開をいちいち取り上げていて興味がわいたので読んでみた。人気のある作品なので仮に自分との相性が悪くても完走はできると思っていたのだけど、18巻でいったん読むのをやめたらもう続きを読む気が起きなくなってしまった。一番気になっていた超展開が始まるところまでたどり着けなかった。
この作品の最初の魅力は、小学校を出たばかりの小柄な少年がその外見から最初あなどられながらも圧倒的な実力で先輩たちをなぎ倒していくところ。でそのあとは、昨日の敵は今日の友とばかりにその先輩たちにまじってライバル校と団体戦で戦っていく。主人公のリョーマ少年だけでなく個性的な先輩たちやライバルたちに魅力があり、主に女性人気の高い作品らしい。いまでいうと渡辺航「弱虫ペダル」みたいな感じ。
自分にとって何が気に入らなかったのかというと、よく分からないけれど話がつまらなかった。なぜつまらなかったのか色々考えてみたところ、それらしい理由がいくつか見つかったので説明していく。
まず舞台となっている青春学園(笑)は元からテニスの名門校であり、勝って当たり前の強豪校だということ。まあでも全国一位というわけではないし、部長が故障を抱えていたり部員が仲たがいしたりと万全ではない中を戦っていく。でもなあ…。部員たちの勝とうという気持ちが他の作品と比べると弱いと思う。名門校の誇りみたいなものよりも、その中での個人個人のプライドが団体戦でも勝っている感じ。
名門校なので層が厚く、対外試合にレギュラーとして出られる部員が限られているため、校内でのライバル争いが激しい。一癖も二癖もある個性的な面々が互いにしのぎを削るところはとても魅力的で良かったのだけど、作者のキャラへの思い入れが強すぎるのか最終的にレギュラーメンバーが決まるところで微妙に気持ちの悪い力学が働いているように思った。あとレギュラーメンバーだけが着ることの出来るジャージっていうのがあって普通に気持ち悪い。
主人公のリョーマ少年が超然としすぎている。なにせ口癖が「まだまだだね」と相手を見下している。かといってこいつの未熟な精神についての掘り下げもなし。子供っぽく意地を張るシーンもあるけれど、ほぼ肯定的に描かれていてかっこよさの演出でしかない。また、こいつと同格の同年齢の仲間がいない。
恋愛要素がほとんどない。リョーマ少年にあこがれる女の子が出てくるだけ。リョーマのほうには何の意識もない。
自分はすでに同じテニスマンガの勝木光「ベイビーステップ」を読んでいたので、テニス自体のゲーム性を知っていく喜びみたいなものはそれほどこの作品からは得られなかった。まあベイビーステップがリアル志向(?)の作品なのに対して、こっちのテニプリ(テニスの王子様)は現実をちょっと(?)誇張した魔球的な描写があってよく言うと娯楽性が高い。でもさすがにコートの枠を一度外れてからボールの回転で戻ってくるような球なんかが描かれると興を削がれてしまう。荒木飛呂彦「ジョジョの奇妙な冒険」みたいなんだから面白いだろうと言われても、だったらテニスというゲームの枠内である必要がないんだし、なんでもありならケンカとか殺し合いのほうが面白い(?)に決まってる。
主人公と父親との関係の描かれ方が薄いというか単にそれっぽいだけの超然としたオヤジが描かれただけだった。この作品はただ淡々とライバル校との対戦が描かれるだけの作品なんだなと思って期待が急速に縮んでいった。
テニスの試合自体の描写は割と楽しめたのだけど、ゲーム展開にそれほど魅力がなく、勝負の行方が強引に決められた感を何度か感じた。ドラマチックな展開のほうがそりゃ面白いんだけど、安易な感じがする。団体戦を扱っておりトータルで勝っていればいいため、最終決戦を盛り上げるためにその前の戦いの結果がぞんざいに扱われている気がする。勝ちでいいじゃんっていう試合が最後あっさり負けるとイラっとくる以前にフーンって思ってしまう。あ、なんだかんだで自分は熱を持って読んだからこそこう思ったのかもしれないけれど。
ちょっと話の展開が荒いと思う。ライバル校の選手たちがたまたま交通事故にあって、それでもがんばって戦ったけれど実力を発揮できずに負けてしまった、なんていう展開があった。うーんなんだこれはと思ってしまった。
なんていうかもうビジネスモデル(?)が違うのだと思う。色々なタイプのかっこいいキャラを描いて、その魅力が映えるような見せ場を用意して読者を楽しませる。これはそういう作品なのだと思う。そしてそれが一番多くの読者が求めているものなのだから、それ以外の要素が多少疎かになっても多くの読者はあまり気にしないのかもしれない。まあさすがにこの作品は売上や人気の割にネットで話の内容自体が語られることはほとんどないため、その理由を察することは出来る。まあスポーツものってそういうものなのかもしれないな。「巨人の星」「タッチ」なんかもストーリーをどうこう話題にするものでもないし。最近になって「キャプテン翼」がスマホゲームの宣伝のためかアニメとしてリメイクされたので見てみたのだけど、中学生編で飽きてしまった。
すごいどうでもいい話をつけ足しておくと、テニスをやっている知り合いが言うには、テニスラケットってボールをネットのどこに当てても打てるのかと思いきやそういうわけではなくて、ラケットの真ん中に当てないと飛ばないらしい。まあさすがに野球のバットよりかは当てやすいんだろうけど。
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