ドメスティックな彼女 10巻まで
流石景 (講談社 講談社コミックス)
いまいち(-10点) 2020年6月14日 ひっちぃ
小説家を目指している高校生の男の子・藤井夏生は、屋上でよく会って話すようになった明るい美人教師の橘陽菜に惚れるが、子供扱いされてなかなか相手にされない。一方、気の進まないうちに参加した合コンで、空気の読めない女の子に誘われるまま抜け出し、とにかく経験したいからと言われ一夜かぎりの情交をする。その後、父親の再婚相手の娘として二人と対面する。ラブコメマンガ。
2019年にアニメ化されたのを見て、ちょっと変わった造りのラブコメだなあと気にはなりつつも、そこまで見続けたいと思わなかったので放置しているうちに一年以上過ぎて話の内容を忘れてきたので、この原作マンガのほうを読んでみることにした。女の子はかわいいけど、ラブコメの悪い面が出てイライラしてきたので途中で読む気をなくした。
題の「ドメスティック」は家庭のという意味なので「ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)」とはまったく関係がないとわざわざ作者が一巻で断っている。要は主人公が気になっている二人の女性が家族の一員になってしまったというのがこの作品の一番の特徴となっている。
主人公の藤井夏生は自分が通う高校の英語教師である橘陽菜のことを好きになってしまうのだけど、この女が色々と意味不明すぎて作品に入っていけなかった。こいつは自分の恩師と不倫している。だからこそ主人公が本気で自分を求めてくる姿を自分と重ね合わせているんだと思うんだけど、なんとこの作品ではそこではなく不倫のほうに焦点が当たってしまっている。そりゃ主人公からすると相手と別れさせるのに教師と教え子なんてダメだと言ってしまえば自己矛盾もいいとこなので不倫ダメ絶対と言わざるをえないのだけど、誰もそこを指摘する人がいないので導入部は不倫をやめさせるだけのモヤッとした話になってしまっている。
で今度はそのとき主人公と共闘して仲良くなった妹の瑠衣が、最初はクールだったけどだんだん主人公にひかれていって三角関係になる。こいつは好き。不機嫌な表情がかわいすぎる。作品の冒頭で主人公といきなりセックスしようとするシチュエーションはとてもあざとかったけれど、男を知らないから男女のことが分からないんだと姉の陽菜から言われたことが原因のようだから彼女なりに考えて不器用に行動を起こしたんだということが分かって愛おしく感じられる。
自分がこの作品をちょっと変わった造りだと思った理由はほかにもあって、主人公がよく相談する同級生がメガネ小太りのよくしゃべる男だということ。主人公の相談相手という重要なポジションのキャラが冴えない男だというところに違和感があった。普通はいけすかないイケメンキャラになりそうなものだ。自分がフィクションのテンプレに毒されているんだろうか。主人公は小説家志望の浮ついていない男の子なんだけど、一方でチャラい男ともつるんで実際合コンに誘われている。主人公の立ち位置がいまいちよくわからなかった。
このメガネ小太りは喫茶店でバイトしており、そこにいるヒゲダンディなオカマも上位の相談相手キャラとして登場する。こいつはなんと元ヤクザの若頭とのこと。こいつの昔のエピソードがいちいち余計に感じた。偉そうなこと言うキャラはオネエにしとけ的なセオリーそのまんまなんだと思う。
主人公が小説家を目指しているというのもいまいち入ってこなかった。こいつは母親を亡くしており、その寂しさをなぐさめてくれたのが小説だったかららしいのだけど、これだけ行動的で社交的な人間がそこまで本に思い入れるようになるのは違和感ありありだった。本好きの陽キャは確かに存在するけれど、書くところまでいくのは相当のことなんじゃないだろうか。
その後も話は文芸部やレストランへと広がっていき、くっついたり離れたりするのだけど、非常に場当たり的でしょうもない話に思えてならなかった。この作品は単行本にして二十数巻まで続いているから人気のあるシリーズなんだろうし、単に自分と合わないだけのことかもしれないけれど、色々とちぐはぐなのが原因なのか話の内容にもキャラにも思い入れることができず、もうこれ以上読んでもしょうがないと思って読むのをやめることにした。
ヘタに少しでも読まないほうがいいと思うけれど、アニメを全部見て話の続きが気になったのなら読むのも仕方ないと思う。まったくつまらない作品ではないし、いいシーンもそれなりにあるのだけど、結果的に出会わなかったほうがよかった作品だった。
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