異世界迷宮でハーレムを 8巻まで
原作:蘇我捨恥 漫画:氷樹一世 (KADOKAWA 角川コミックス・エース)
まあまあ(10点) 2022年5月4日 ひっちぃ
ニートで先行きが見えない中、遊び半分で「自殺支援サイト」にアクセスした加賀道夫は、まるでゲームの初期設定のような画面を経てそのままファンタジーRPGのような異世界に放り込まれる。腹をくくった彼は、恵まれたパラメータを活かして迷宮で稼ぎ、ハーレム生活を夢見る。小説投稿サイトの人気作が原作の青年マンガ。
アニメ化するというので一足早く読んでみた。おもしろかった。エロかった。
よくある異世界転生ものだと主人公が最初から強い能力を持っているのだけど、この作品は初期設定でランダムに得られるボーナスポイントに99が出るまで粘っただけで、あとはそれを生かしてゲームシステムの範囲内でうまくやるだけ。一応ジョブを自由に付け替えたり魔法を無詠唱で唱えられたりなんでも鑑定できたり、経験値取得が何倍とか次のレベルまでの経験値が何分の一とかいろいろあるけれど、普通に死の危険があるので無双とは程遠い。小説投稿サイトの作品はいろんな要素を相互に節操なくパクりまくるのでよくわからないけれど、この作品は人気作らしいのでこの作品発祥の要素もなにかあるのかも。
異世界で最初に放り込まれた場所はとある村の馬小屋で、そこで強力な魔剣デュランダルを拾った彼だったが、いきなりその村に盗賊団が襲来するイベント(?)が発生する。村の劣勢を悟った彼は、乱戦のどさくさにまぎれて盗賊団の団長を後ろから切りかかって倒す(その程度の力しかないから)。そんなこんなで村を救った彼は、村から多額の報酬と盗賊からひっぺがした装備もろもろを受け取ることになる。ところがあくる日その中の「盗賊のバンダナ」がただのバンダナにすり替えられていることに気づき、村長との合議により盗んだ奴を捕らえて奴隷として売ることにする。
街に連行してそいつを売り払った彼は、奴隷商から狼人族の女奴隷ロクサーヌを買うことを勧められる。言語の問題によりパーティを組むのが難しい彼にとって、自分と同じブラヒム語(日本語と同じらしい)が話せる戦闘奴隷の上に性奴隷としても使える美人の彼女はまさに夢のような存在だった。
なんとか金を工面して彼女を手に入れ、奴隷としてのしつけを受けた従順な彼女と一緒に迷宮でモンスターを狩って生計を立てる。昼間はゲームの知識を生かして有利に立ち回り、夜はお楽しみ(?)の生活が続く。
狼の亜人の奴隷を買うところとか、職業やスキルをやりくりするところなんか、時野洋輔「成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです」そのまんまなのでびっくりした。こっちのほうが先なので向こうがパクッたのだろう(?)。でもどちらもそれぞれおもしろいし、いろんなところで違っている。
エロい。18禁描写はないけれどものすごく肉感的でねちっこい性描写がある。特にキスの描写がすごい。かと思ったら昼間は普通にゲーム攻略するのでびっくりする。ロクサーヌは最初夜のおつとめに恥じらいを見せるのだけど、徐々に自らも求めるようになる。一方で彼女は自分の戦闘能力にも自信とプライドを持っており、迷宮探索にも非常に乗り気なのだった。
奴隷を扱った作品が割と多いのはどうしてなんだろう。男性は従順な女性を求めているけれど(?)、現実にそんな女性を出すと今の時代あからさまに不自然なので(!)奴隷という設定にしているのかもしれない。そう考えるとなんだかいびつではあるけれどうまいやりかただなあと思う。
この作品の「迷宮」のしくみがすごくカッチリしていてちょっと興ざめする。なにせ階層によって一度に出てくるモンスターの数や種類が決められているほか、ボス部屋というのがあって一度に一パーティしか入れないとかボスを倒したら一定時間で再出現するとか規則的すぎる。主人公がそのしくみを分かったうえで計画的に攻略を進めていくところはそれはそれでおもしろいのだけど、よくわからない存在の手の上で踊っているだけのように思えてワクワク感に乏しい。システムの隙間を突いて一気に攻略を進めるとかあってほしい。不意に「モンスターハウス」に踏み入って大ピンチに陥ることもあるのはよかったけれど、それを突破しても特に何もなかった。
既刊時点で二人目の奴隷を手に入れ、パーティ編成が少し豊かになったほか、新たなジョブを得ることによる新展開もあって楽しませてくれる。でも極端に強くなったりなんでもできるようになったりするわけではない。こういう地道なところがこの作品のいいところなのかもしれない。
主人公がすぐに無双するような爽快感のある作品ではないけれど、どんな法則で成り立っているのか分からない未知の異世界で主人公がいろいろと実験しながら攻略していくのが楽しめそうなら読んでみるといいと思う。あとディープキスのねちっこい描写が好きな人と。
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