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陰の実力者になりたくて! コミカライズ版 12巻まで
原作: 逢沢大介, キャラクター原案: 東西, 作画: 坂野杏梨 (KADOKAWA 角川コミックス・エース)
まあまあ(10点) 2024年1月14日 ひっちぃ
正義のヒーローでも悪の黒幕でもなく、物語に時折登場する圧倒的な力を持ちながら表立って動かない「陰の実力者」に幼い頃から強くあこがれていた影野実だったが、修行に夢中になるあまり事故にあいファンタジー世界に転生する。そこでも修行を続けた彼は圧倒的な力を持つようなり、たまたま助けた女にホラを吹き込んで解放したところ、そいつがいつのまにかどんどん人をスカウトし、知らないうちに陰の組織のリーダーに祭り上げられる。小説投稿サイトに書かれた小説のコミカライズ版。
2022年にアニメ化されたのを見たときに、おもしろいんだけどまじめなのか冗談なのかよくわからない描写に混乱し、わけのわからない作品だと思って途中で見るのをやめてしまった。その後、この作品の原作小説が好きだという同僚の話を聞いているうちに読みたくなり、いきなり小説を読むんじゃなくてコミカライズ版があったのでこっちから読んでみた。おもしろかった。
原作小説がどんな感じなのか知らないんだけど、このコミカライズ版は主人公のすっとぼけた感じがよく出ていて笑える。ポーズをつけてかっこいいセリフを言ってもト書きのように内情が晒されることによってツッコミが入る。アニメだとこういう多重構造の演出が難しく、ナレーターがしゃべったらヘンな色がつきそうだと判断したのか、特に説明もなく進んでいく。急に主人公がボコボコにされる描写があってあぜんとした。
主人公は学園の平凡な生徒としてふるまいつつ、裏では「シャドウ」として暗躍する。彼のもとには「シャドウ・ガーデン」という組織に連なるたくさんの美女たちが集う。なかでも一番優秀な7人の幹部はそれぞれの特技を持って商売や創作活動や狩りなどを行っている。主人公は彼女たちにほとんど関心がなく、活動を全然把握していないのがおもしろい。それなのに彼は自分の言いたいセリフを言うために知ったかぶりをし、なんだかんだでそれがうまくいったり、逆に全然想定外の結果になったりする。
そう、この作品の主人公である影野実の目的は「陰の実力者」を気取ることなので大きな筋書がない。だから毎回場当たり的に動いている。ディアボロス教団を滅ぼすというのは単なるホラであって、シャドウ・ガーデンという組織が勝手に一人歩きしていっているに過ぎない。だから、こいつの大したことない望みが作中でかなっても読者的にはそこまで楽しくはないと思う。
その分、周りのヒロインの描写が厚く、彼女たちの望みがかなうことを読者は願うようになると思う。シャドウ・ガーデンの幹部である「七陰」の面々は主人公から信頼されることを喜びとしているし、アレクシア王女は姉のアイリスのように強くなりたいと思っているし、魔剣士学園の生徒会長のローズ先輩は自分の故国を救おうとしている。
言い忘れたけれど主人公の戦闘スタイルはたぶんなんでもアリなんだけど剣技に魔力が加わった感じだと思う。純粋な魔術を派手に使っているシーンはなかったはず。こいつはもともと現実世界で核攻撃から自分の身を守る方法を真剣に考えていたキ〇ガイで、そのために魔力を求めていたのだけど、その前からフィジカルを追求していた。戦闘シーンではよくわからない技でよくわからないうちに勝つ。
こいつには気の強い姉がいて、なんだかんだで言いなりになっている。自分の弟には何をしてもいいと思っている典型的な姉キャラなのがウケる。主人公ならこいつを「わからせる」こともできると思うんだけど、そうすると「陰の実力者」として目立たずにいることができなくなるからだろうか。
ちょっとネタバレになるけれど、12巻で現代日本に飛ばされる。正直展開に不安を覚えたので同僚に聞いてみたら知らないという。Web版にはそんな展開はないらしい。書籍版かこのコミカライズ版だけの展開なんだろうか。
モブキャラ(脇役)の命名がすごくいい加減で笑った。良くも悪くもテキトーな作品なので、重厚な作品世界に浸りたい人には向いていないと思うけど、軽妙なギャグに彩られた手軽に読める無双ファンタジー作品なので、そういうのが好きな人は読んでみるといいと思う。
[参考] https:// comic-walker.com/contents/detail/ KDCW_KS04200967010000_68/
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