全カテゴリ
  ■ マンガ
    ▼ アンダーニンジャ 12巻まで

  • 新着リスト
  • 新着コメント

    登録

  • アンダーニンジャ 12巻まで

    花沢健吾 (講談社 ヤンマガKCスペシャル)

    まあまあ(10点)
    2024年2月12日
    ひっちぃ

    忍者が警察官と同じぐらいいるとされる空想現代日本で、無職の青年としてボロアパートに住んでいた下忍の雲隠九郎のもとに、宅配便の配達員の恰好をした加藤という中忍が現れ、荷物とともに任務を授けられる。もし現代に忍者がいたらという思考実験のもとで展開されるシュールギャグアクションマンガ。

    2023年10月にアニメ化されたのを三話ぐらいまで見てなんじゃこりゃと思ってそれ以上関わらないでおこうと思ったのだけど、アニメにうるさい同僚が完走したというので気になってこの原作マンガを見てみた。おもしろいっちゃおもしろいんだけど…。

    忍者にあこがれる謎の外国人が練魔(練馬?)に現れる。海外の組織に属する工作員の彼は、娘を人質にとられたことから仕方なく日本の忍者組織とコンタクトを取ろうとしていたが、無知ゆえか(?)暴力的な手段をとったため、治安維持のために(?)日本の忍者たちが迎え撃つ。

    こういっちゃなんだけど、この作品で展開される舞台設定とかはあんまり本気で読み解かない方がいいと思う。読んでいけばわかると思うけど超いい加減だからw

    無精ひげを生やした24歳ぐらいの若者である雲隠九郎は、半ば忍者屋敷のようになっているボロアパートで独自の修行をしながら隣人である冴えないサラリーマン男性の大野さんやデリバリーヘルスに勤める妙齢の女である川戸さんとテキトーなやりとりを繰り広げている。いじめで不登校の少年や義父から虐待を受けている女の子が近所に住んでいてそれぞれしたたかに生きていて話に絡んでくる。人情話にはならない。

    序盤は現代に忍者がいたとしたらどんな武器や道具を使うだろうかといった感じの描写が続く。光学迷彩や防刃プロテクターのついた戦闘用スーツだとか、電気ショックやドローンやボディスーツまである。拳銃を持った相手との戦闘がどうなるか、アクションで描いてみせる。

    題の「アンダーニンジャ」とは、下っ端の忍者である「下忍」という意味ではなくて(そっちの意味もあるのかもしれないけど)、UN (Under Ninja) と略される組織のこと。日本の忍者組織は第二次世界大戦での敗北によりGHQに一度解体されており、新たにNINという組織に生まれ変わっているのだけど、それとは別に連合国により作られたのがUNとのこと。

    それぞれの組織が何を目的として動いているのか全然語られない。主人公たちはNINに属している。中忍の加藤はたまたま目撃した強盗事件で犯人たちを容赦なく殺害していることから、日本人のために動いているようではあるのだけど、NINは警察とはあまり仲がよくなくて協定を結ぶことで一応の協力関係にある。一方で役割がかぶらない自衛隊とは装備の調達関連で仲がいい。

    主人公の雲隠九郎が潜入することになる講談高校は、かつてのスパイ養成学校として実在もした陸軍中野学校の跡地に建てられており、三つの勢力が共存する特異点として存在している。UNとNINと日本政府?厚生労働省の一部署である通称エンコーの部隊がいて戦うことになるのだけど、結局彼らの目的がなんなのかもさっぱりわからなかった。

    普通に考えれば、UNは日本を弱体化させようとする外国勢力の出先機関で、NINは国を守ることを目的としていたのにいつのまにか組織の存続自体や幹部の私利私欲を満たすことを目的とするようになった暴走組織ってところだろうか。日本政府に直結した組織はいまのところ影が薄くて弱いのであまり話に絡んでこない。

    登場人物も一体何を考えて行動しているのか謎で、全員わけのわからないことを言いながら場当たり的に行動しているように見える。とりあえず目先の任務の達成とか戦いでの勝利だけはわかりやすいので、その場その場でセッションが行われるのをながめていくしかない。

    忍者学校の描写とかほんとふざけすぎていてまじめに読んだら負けだと思う。くノ一を養成するための「汁忍」って。修行方法とか選抜試験とか、作者はたぶんリアリティを持たせるつもりなんか全然なくて、おもしろがりながら色々考えたんだと思う。かといって読者を笑わせるつもりもないみたいで、ただただ妙な設定ばかり語られていく。シュールと言うほかなかった。

    結構グロい描写がある。人体切断とか。エロ描写はほとんどないけれど、デリバリーヘルス嬢の川戸さんが窓を開けっぱなしにして大股広げて寝ていたり(局部は露出してない)、勤務中に隊長とくノ一とがちちくりあっているシーンなんかがあってよかった。男の方は加藤が戦闘中にイチモツをボロンと出しっぱなしで戦う描写があって笑った。下ネタもわりとあっておもしろかった。

    出てくるキャラは大体不敵な表情をしていてみんな何をするか分からなくて魅力的ではあると思う。一方で野口さんのような一般人はオドオドしていて表情豊かでよかった。女キャラが割とみんな爬虫類っぽい感じがして、これはこれでかわいいと思う。素足がよく出てくるのもよかった。

    自分みたいな物語の筋を楽しみ登場人物の心の動きを味わいたいような読者とは徹底的に合わない作品だと思う。舞台設定がいい加減なのもすごくいやだった。でも登場人物のやりとりはおもしろく、すぐ先に何が起きるのか楽しみで読めた。この人は映像畑の人なんだろうかと思ったけど違った。

    同じ作者の作品なら以前「アイアムアヒーロー」を読んだ覚えがあるのだけど、ゾンビものであまり興味をひかれなかったのですぐに読むのをやめてしまった。

    この作品をいったいどんな人に勧めたらいいのかよくわからないのだけど、とりあえずアクション映画とか好きな人でマンガの読み方が分かる人なら楽しめると思う。また、もし忍者が現代日本で当たり前のように暗躍していたら、といった想像をめぐらせて楽しめる人にもいいと思う。ガジェット好きや、シュールなギャグマンガ(?)が好きな人にも。でもそれ以外のすべての人には合わないと思う。

    [参考]
    https://yanmaga.jp/comics/
    %E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%80%E3%8
    3%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B8%
    E3%83%A3

    コメントはありません

    manuke.com